Seeed studioの基板実装サービスを使ってみた(続)

Fusionの基板作成お試しサービス

Seeed studio の基板作成サービスFusionでFree Assembly for 5PCBsという実装お試しサービスをやっています。

$4.9で基板作成+部品実装までやってくれて、部品を実装した基板を送ってくれるというものです。
利用できるのは一度だけ、基板サイズ100×100㎜以内の2層基板で、部品が20種類以下という条件で、Seeedの在庫部品だけを使えば実働3~4日で出来上がるという謳い文句です。
部品代は別途必要ですがチップ抵抗やコンデンサ等はDigikey価格よりかなりお安くなっています。

実装済み基板5枚限定のサービスですが、基板の種類が1種類で100x100㎜以内に収まるようにすれば面付可能で、部品点数の制限は無いみたいなので、小さい基盤なら20枚、50枚の基板を特価で作ってみることも可能だと思います。

基板実装サービスを試してみた、その後

最初に実装してもらったこのSTM32H753VIT6を搭載したボードは、5枚の内1枚に半田不良があり、半田ゴテをあてて使えるようになりました。

国内で部品実装を依頼するのに較べれば信頼性は劣りますが、設計データだけで実装済みの基板が安く入手できるので、その後何度か利用しました。

簡単な基板は40枚で不良無し

USBシリアルICとコネクタ、少量のチップ部品が載った組み込み用USB-serial基板の場合は40枚(面付4×10枚)作ってエラーはありませんでした。
小さいチップ部品のはんだ付けは良くできているのでピン数の多いフラットパッケージの場合に問題が起きやすいようです。

OPL部品だけを使うと1~2週間で完成基板が届く

OPL部品というのは、Seeedが保有する在庫部品でShenZhen OPL( 22380 )Seeed OPL( 641 )と結構な数があり、簡単な基板をこの部品だけで作ると実働1週間程度で基板から実装までやってくれます。
上の基板の場合は注文から10日で届きました。

最初に実装したSTM32H753基板の修正版

最初に5枚作った基板をテスト段階で2枚壊してしまったのと、もともと基板の必要枚数を過少に見積もっていたので回路を修正した基板を10枚実装してもらいました。

この基板はOPL外部品を使っていますが、注文から3週間あまりで届きました。
Seeedの込み具合で納期にはかなりばらつきがあるようです。

10枚の内3枚に半田不良あり

予想はしていましたが、届いた基板をテストすると10枚のうち3枚が半田不良で正常に動作しない状態でした。
前回と同じく、CPUのピンにフラックスを塗って半田ごてをあてただけですべて復活しました。

顕微鏡の接眼レンズにiphonのカメラをあてて写真を撮ったのであまり鮮明ではありませんが、肉眼で見るとピン端の影ではなく明らかなクラックが確認できました。

中華メーカーに実装を依頼することの是非

短所
1. 国内メーカーに比べて信頼性が劣る

 数少ない経験ですが「どんな基板でもトラブル無し」を期待することはできません。ただ、Seeedの格安サービス以外なら信頼性は良くなる可能性はあります。

 私の印象では、思ったよりは悪くなかったというところです。
少なくとも回路評価用の試作基板としては十分使えました。

2.トラブルがあった時の意思疎通が難しい

まず言葉の問題がありますし、向こうの人は日本メーカーのように最初から低姿勢で話を聞いてくれるわけではありません。
問題を具体的に証明してきちんと話をすれば対応してくれる可能性がありますが、それなりの労力が必要となります。

長所
1.ハード設計が出来れば個人でも完成基板を入手出来る

これが一番大きなメリットではないかと思います。
KiCADを使えば個人でも回路設計から基板設計まで出来て、Seeedの格安基板サービスを使えば数千円で基板を入手できる時代になり、マイクロマウスや自作ロボットを作れる人は結構利用していると思うのですが、今度は実装メーカーとの接点がなくてもクレジットカードさえあれば完成基板が作れるようになったわけです。

個人経営の会社でハード設計をしている人にとっては朗報だと思います。
誤解を招く表現なので言い換えておきます。
試作段階のテスト用に使えば正式な基板を作るまでのコスト削減が出来ますし、顧客に実際に動作する見本を提供できるということです。
信頼性に問題があるということをはっきりと説明して、必要に応じて実装の依頼先を変更しさえすれば開発コストの低減と信頼性の確立を両立できます。

工業高校などで使われる教育用基板では生徒にはんだ付けの実習をさせる都合上フラットパッケージ部品の使用を避けることがありますが、このような実装サービスを利用すれば先生が設計した回路を直接基板化できますし、もともと信頼性は問題にならない分野なので特に有用です。

2.大量生産も可能

私の会社は工場の設備や特殊な検査機器を開発しているので、つきあいのある実装屋さんは小ロット専門で、数千枚以上の完成基板を作るのは不得意です。
Seeedのオンライン見積もりなら1万枚以上の基板を作るときの原価を確認するのも簡単です。

最近、Arduino用ならAlexpressやAmazonで数百円の基板が販売されていて、どのようにしたらあんなに安い基板が作れるのだろうと不思議でしたが、例えばUSB―Serial基板を1万枚作る場合の見積もりを取ってみると3万ドルあまりの見積額になります。

1枚あたり300円台ですから1000円前後で売れれば採算は取れる計算になります。
投入した資金を回収できるかどうかは博打のようなものですが、中国の会社のビジネスモデルを少し理解できたような気がしました。

ただし、これも不良品が一定の確率で混ざっていることが暗黙の了解になっている、格安基板を対象としたビジネスであることが前提です。

 

Arduino IDE vs MPLAB-X

マイコン制御プログラムの普及に大活躍したArduino IDE

Arduinoは元AtmelのCPUであるAVRを使って、Arduino IDEで数行のスケッチ(プログラム)を書けば、USBケーブルで接続したArduinoボードにプログラムを書き込んで動作するようにした、入門用マイコンです。

マイクロソフトを創業したビルゲイツは、最初に作ったパソコン用のBASICの大ヒットで成功への足がかりを作りました。

初期のPCでは複雑な準備をして、コンパイルに長い時間をかけないと動作するプログラムが作れませんでした。
「数行のプログラムを書けばプログラムが走り、結果が表示される。」ことが
BASICが大ヒットした理由ですが、Arduinoの大ヒットも「歴史は繰り返す」を見ているような気がします。

小学校プログラミング教育の教材としても最適なArduino

Arduinoはとにかく簡単にマイコン制御の勉強を始めることが出来るため、初心者向け入門用として優れているシステムです。
マイコンに関する予備知識が無い 小中学生でも、マイコンボードを使った制御プログラムを作って、動作を試してみることが出来ます。
文科省が推進している小学校プログラミング教育の教材としても、大いに活躍すると思います。

制御用マイコンとしてのArduinoの限界

Arduinoはマイコン入門用の教材として優れた特徴を備えていますし、数多くの拡張ボードが安価に提供されているため、Arduinoの機能が仕様を満たしているならば、Arduinoを使ってシステムを組むのは、開発効率においてもコスト面においても有利なので、検討する価値があります。

ただし、手軽に使えることを優先したBASICが開発のプロからは歓迎されなかったように、使い易さと性能にはトレードオフの関係があるため、Arduinoで高性能なシステムを組もうとすればMPLAB-Xを使うより多くの労力が必要となる分岐点があります。

Webを検索すると、Arduinoに使われているAVRCPUの性能を限界まで引き出すために、AVRのデータシートを調べて周辺機能レジスタを直接書き換えるなど、苦労している人が見つかります。

デジモノ覚書-Arduino Uno – PWM周波数を”自由に”変更する

万事、塞翁が馬- mega のタイマー割込みについて調べる

周辺機能レジスタを直接いじってAVRの性能を引き出すことが出来る能力と時間があれば、MPLAB-XとPICやSTMCubeMXとstm32マイコンの組み合わせを使えば、はるかに高度な制御をおこなうシステムを簡単に作れるのに、勿体ないと思ったりします。

高校生全国ものづくりコンテスト電子回路部門の課題を解くのが、ちょうどArduinoの限界点だと思います。
つまり、工夫してArduinoの割り込みを使いこなせるレベルの能力があれば、MPLAB-XとPICマイコンの使い方を覚えた方が幸せになれるのではないか、といったところでしょうか。

企業人から見れば、工業高校生レベルなら、Arduinoを卒業して、MPLAB-XでCPUの周辺機能レジスタを設定する技術を身につけて欲しい、という勝手な要望もあったりします。

それでもArduinoが使い易い理由

高度な制御になると加速度的に扱いが難しくなるArduinoですが、それでもArduinoを使いたい理由は、CPUボードと周辺ボードの豊富さと入手しやすさにあるのではないでしょうか。

例えばAmazonで検索すると、Arduino用超音波センサモジュールが、ひとつあたり200円以下で見つかります。

また、アリエクスプレスのサイトでArduinoをキーワードにして検索すると、100均レベルの価格で多数のパーツを見つける事が出来ます。

個人でPCB基板を設計製作することが難しかった少し前までは、既製のボードを買って組み合わせるしか手段が無かったため、とにかくArduinoでシステムを組むのが制御システム製作の近道でした。

今は個人が自由にPCB基板を作れる時代

ところが、PCB基板作りの環境はこの10年で大きく変わりました。

ひとつは、高機能なオープンソースのKiCadを使って個人で基板の設計が出来るようになったことで、もうひとつは格安基板メーカーの出現で1,000円以下で100㎜x100㎜の基板10枚を注文できるようになったことです。

個人が最初にPCB基板を設計して発注するには多少のハードルがあるのは事実です。
ただ、そのハードルは思ったほど高いものではありません。
上で紹介したように、Arduinoの限界を引き出すためにAVRのデータシートを読み込んで、試行錯誤に時間をかけてプログラムを作っている人ならば、簡単に乗り越えることの出来るハードルです。

マイCPUボードを使ってロボットコンテストに取り組んでみませんか

Arduino用周辺ボードはPICでも使えますから、目的にあったCPUボードを自作してセンサーはArduino用センサーボードを使うことで、高機能なシステムを安く製作することが出来ます。

ものづくりの楽しみは、何かを作り上げた時の達成感です。
購入したArduinoだけで制御システムを組み上げるより、自分で設計して作った
CPUボードでシステムを製作した方が、はるかに大きな達成感と喜びを感じられることを保証します。

マイコン制御に興味がある人には、是非、CPUボードの製作まで手掛けて頂きたいと思います。

ステッピングモータードライブ基板のKiCad5データ

モータドライブ基板のデータを公開します

PIC18F45K22CPUボードに重ねて使う、ステッピングモータやDCモータをドライブ出来るモータドライブ基板のKiCad5用データです。
ロボットコンテストで使うステッピングモータやDCモータのドライブ基板の参考として設計しました。
この基板は部品の配置までで、パターンは完成していませんので、御自分でドライブ基板を設計する時の参考データとしてお使いください。
githubの下記リンクに置いています。

KiCad5-StepMotorDriveType1

回路図PDF

StepMotorDriveType1-V10_sch

データとライセンス

ライセンスはオープンソースハードウェア扱いとし、オリジナル元の記載を忘れないようにしていただければ、使用上の制限は設けません。

モータドライブ基板 について

バイポーラステッピングモータ用として、秋月電子にあるドライブICの中から使い勝手の良さそうなL298NとパワーリレーEP2-3S3LAbをそれぞれ2個搭載した基板を設計してみました。

基板パターンの作り方

上図のように、部品のフットプリントを配置しただけでパターンは殆ど引いていません。
基板サイズは Fusion PCB の特価サービスが利用できる100㎜x100㎜に設定しています。

モータードライブ基板など、数アンペア以上の電流を流す基板で注意することは、バターンの太さを出来るだけ太くすることです。
パターンに流れる電流とパターン幅は、1ozの銅箔を使った時に1A/1mmと言われています。これは大電流を流した時にパターンの抵抗により発熱してパターンが焼損することを防ぐための目安です。

銅箔の厚みは面積当たりの重さ(単位oz)で表記されていて、標準が1ozで約35umです。信頼性が必要な時には2oz, 3ozの基板を指定することも出来ますが、特価サービスが使えないため値段が10倍以上になってしまいます。

L298Nの機能

L298Nには最大2Aの電流を制御できるフルブリッジドライバが2つ含まれていて、一個のバイポーラのステッピングモーター、または二つのDCモータの正逆転、回転数を制御することが出来ます。

L298Nの出力ピンとコネクタの間のパターン幅は出来るだけ広くとって下さい。
最大電流が2Aのモーター用のパターン幅が0.5㎜であっても、回路は動作しますし、いきなりパターンが焼けることはありませんが、大電流が流れる部分には可能な限り太いパターンを使うようにして下さい。

パワーリレー EP2-3S3LAbの機能

このリレーは自動車のパワーウィンドウに使われているモータ等を正逆転制御することが出来ます。
リレーですから電流の調整は出来ませんが、一つのリレーの中に2つのコイルが入っていて電流の向きを変えてモーターを駆動することが出来、最大25Aの電流をON/OFFすることが出来ます。

このリレーの最大定格は25Aですが、リレーとコネクタの間が短いですし、25Aを定常的に流すアプリケーションは殆ど無い思いますので杓子定規に25A=25㎜幅のパターンを引く必要はありません。
実際に使ってみてパターンが過熱するようなら、ジャンパ線で接続する対策を取ることも出来ます。
ちなみにリレーに接続されているコネクタは定格電流10Aなので、大電流が定常的に流す場合は、コネクタが過熱しないかをチェックして、必要であれば対策を考えて下さい。

PIC18F45K22CPUBrdのフットプリントと3Dデータ

このCPUボードのフットプリントには図のようにPIC18F45K22CPUボードから出力した3次元データを設定してあります。
このようにKiCadで作った基板の3Dデータを、フットプリントのデータとして使うことで、3Dデータ付きのフットプリントモジュールを作ることが出来るというサンプルです。

サンプルデータの使い方

このサンプルデータをKiCadで開いて編集する方法については KiCad5サンプルデータの使い方 を参照してください